蒸気な日常

PCゲーム(Steam)を中心に、映画、小説などの感想もつらつらと。

君は「婆裟羅」を知っているか

今回は、8/14に発売されたばかりの「婆裟羅コレクション」(Steam)の「婆裟羅」について書いてみます。面白いんですよ、これ。

 

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婆裟羅タイトル

store.steampowered.com

 

・シューティングと戦国時代、そしてメカ!

「婆裟羅」は2000年、「婆裟羅2」は2001年にビスコからリリースされたアーケードゲームで、いわゆる縦方向シューティングです。「戦国エース」「戦国ブレード」(彩京)が1993、96年、「ぐわんげ」(ケイブ)が1999年であり、シューティングの舞台設定の1つとして和風のものを取り入れようという発想が徐々に確立されていった時期なのかもしれません(「戦国エース」までは戦闘機に乗ってましたが「戦国ブレード」以降は人そのものが自機として飛ぶようになったのかも)。ちなみに、家庭用ゲーム機向けの「戦国BASARA」(カプコン)は2005年で、これより更に少し後になります。余談ですがビスコの「婆裟羅」の方のスペルは「VASARA」です。

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左が婆裟羅1、右が婆裟羅2

 

この「婆裟羅」シリーズの特徴なんですが、何といっても戦国時代とSFチックなメカの融合というところにあります。戦国武将はイケメン・渋メン・美少女化され、メガネをかけたり葉巻を加えたり。今でこそ、歴史上の人物のイケメン化・美少女化はありふれた設定となってしまいましたが、当時はかなり斬新でした。各武将たちは空飛ぶバイクに乗り、敵将は大型ロボでそれを迎え撃つというスタイルは荒唐無稽でありながら、何となく面白そうに見えるキャッチーな魅力があります。そして、こんな滅茶苦茶な設定のように見えて、歴史的な背景を踏まえた上で各面の構成等が考えられています。イケメン・美少女の部分ばかり注目されてしまいますが、ここが熱い。ここが語りたい。

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プレイヤーキャラ。左から真田幸村島左近雑賀孫市

 

・開発者の戦国時代への思い入れが伝わってくる

「婆裟羅」(1作目)のストーリーは戦国時代の末期、大阪冬の陣・夏の陣あたりをベースにしており、主人公真田幸村島左近雑賀孫市の3人が徳川家康陣営に戦いを挑むというものです。ここからは歴史的な背景を踏まえていると感じた点について画面での例を交えて。

 

4面ボスは本多忠勝で、中ボスとして真田信之が登場します。これは、忠勝の娘婿が信之であったことと関係しています。関ヶ原の合戦でもこのつながりが一因となり、真田家は父昌幸と弟幸村(西軍)と兄信之(東軍)の2つの陣営に分かれたと言われています。信之との戦闘中に、天守閣から発進する忠勝の機体、芸の細かい演出に熱いものを感じます。

 

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真田信之のロボとの戦闘中、天守閣裏の堀から発進する本多忠勝

更にここ、プレイヤーが幸村を選択していると信之のセリフが変わります(顔グラも)。倒すのも、時間切れで逃がすのもプレイヤー次第。まあ弾避けに必死なわけですが。

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島左近雑賀孫市の場合の真田信之のセリフ

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プレイヤーが真田幸村の場合のセリフ

 

最終面、家康の陣へ向かう途中に多くの旗印が倒れています。これが石田三成の「大吉大一大万」だったり、宇喜多家や小早川家のものだったり(後の2つは今回スクショを見て初めて気付きました)、本当に細かいところまでこだわっている。

 

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戦場に倒れる「大吉大一大万」の旗印。画面上の赤い旗印は小早川で、左下の青い旗印は宇喜多

 

また、ちょっと史実からは外れますが、このゲームが出る少し前に、「影武者 徳川家康」という小説、漫画がありました。「婆裟羅」はこの「影武者 徳川家康」にも影響を受けていると感じています。漫画は原作・隆慶一郎/漫画・原哲夫という「花の慶次」と同じタッグで少年ジャンプで連載されていました。家康がどこかの戦場で既に命を落としていて、実は影武者が江戸幕府の礎を築いていた、というのは史実としては眉唾もののようですが、面白い説ですよね。「婆裟羅」にも「世良田二郎三郎元信」という武将が登場するので読んでいた方はアッと思うはず。

  

↑(Kindle版が出ているのは知らなかった!) 

 

ここまでの話と合わせて、もう1つ語りたいポイントがあります。ここまでのスクリーンショットで気付いた方もいると思いますが、このゲーム、グラフィックの書き込みが凄まじいんです。こちらもいくつか例を。

 

田んぼ にカカシが立ち、間には水が流れている。更に右下の池では魚が泳いでいる!(ちょっとしか映らないのに魚の影が動いている) 

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序盤、おそらく夏をイメージした田園地帯

雪の降り積もった田んぼの上を戦車が通ったので、跡が残っている。木々は枯れている。

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こちらは冬をイメージした面。わだち燃え

極めつけがここ、5面ボス直前、池に飛び込むカエル。いったいどれだけの人が気付くのか。でもすごい。

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画面中央左、石から池に飛び込むカエル

この他にも、戦車とともに駆けてくる兵や、逃げる人々等の描写もされていて本当に細かいです。自分のプレイを録画して見返すと、「こんなところで動いてる!」というような発見があったりします。

 

・そして2019年に復活を遂げる

2000年当時、自分はゲーセンでシューティングゲームを遊ぶプレイヤーであったとともに、戦国時代や三国志等、日本や中国を舞台にした歴史小説や漫画にもはまっていたこともあり、「婆裟羅」は「これは面白い!」と思っていました。ただ、他のプレイヤーの反応としては「何このバカゲーw」「でもやってみると難しい…」といった反応で、つかみは良いものの、あまり好評を得ることができず残念に思っていました。見た目はトンデモなバカゲーなんですが、やっているうちにシューティングとしてもよく練られた作品だと分かってくるんですよ。ただ、置かれているゲーセンも少なく、早めに姿を消してしまったこともあり、自分もクリアどころか4面ぐらいまでがせいぜいでした。

 

しかしながら2019年8月、今回の移植でついに、思う存分プレイできる!というわけで当時の記憶がまざまざと蘇るととも、本作への熱い思いが高まり、ブログエントリにしようと思い立ったわけです。この機会に少しでも多くの方に興味を持っていただければうれしいことです。PS4XBOX、Switchでも発売されるようですし、是非!

 

自分以上に熱い熱い思いを持っていたブラジルの開発会社QUByte Interactiveさんに感謝の意を表して、今回のエントリはここまで。自分は真エンディングを目指すための修行に戻ります。

 

参考:

MILLENNIUM CRISIS [VASARA]

↑個人で作成されている婆裟羅攻略サイト。大変参考になります。本エントリを書く際にも参考にさせていただきました。

『婆裟羅』はなぜブラジルの開発会社の手により蘇ることになったのか? 戦国シューティング復活の経緯を聞く - ファミ通.com

 ↑ブラジルでも本作は「隠れたお宝」というイメージだったようですね。

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